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2022/09/30

【事故調査】時差式信号機のある交差点での信号色確認の難しさ

検討事例 時差式信号機のある交差点での信号色確認

 日頃,私たちが走行する市街地の道路では信号機が至る所に設置されており,その信号機の表示する色に従い,発進・停止を繰り返し目的地に向かっています。道路交通法第7条では「道路を通行する歩行者又は車両等は,信号機の表示する信号(中略)に従わなければならない」と規定されていますが,通常,歩行者・車両が信号を遵守して歩行・走行していることで,交通事故の防止,交通のスムーズな流れ等に資しています。

 一言で信号機と言っても,その種類は多種多様に亘り,「(通常の)定周期式」,「押しボタン式」、「(半)感応式」「(矢印ごと走行OKの)セパレート式」,「歩車分離式」,「時差式」等様々です。それぞれ,交差点の形状や交通量などが考慮され,設置されている信号機の種類も異なり,基本的にはその場所に適した信号機が設置されています。
 この中で,運転者にとって対向車側の信号色が認識(確認)できない信号機の種類は「時差式信号機」と言え,皆さんも一度ならず戸惑いを覚えた経験がおありと思います。「時差式信号機」は,例えば,交通量が多くても片側一車線道路で,「(右折可青矢印あり信号機等の)セパレート式信号機」を設置することが出来ない交差点等に設置されています。しかしながら,「時差式信号機」が〈片側の青信号を延長するタイプ〉であることから,対向車線側の車両がきちんと〈赤信号で停止〉すれば,直進車と右折車が同時に進行できるメリットもありますが,一方で,対向車側の車両が赤信号で交差点に進入してきた場合でも,運転者にとって,対向車側の信号色を認識(確認)できないというデメリットもあります。

 通常は「時差式信号機」の場合,大半は一方,もしくは双方の信号機の真下に時差(式)信号と表示されていますが,基本的に〈自車側(あるいは対向側)の青色が何秒長い〉等の表示はありません。最近はセパレート式との組み合わせ等,改良が加えられているとのことですが,通常はその交差点の信号機を熟知している運転者以外は,どちらの信号機が一体何秒間青色が長いのか認識(確認)できないという点からも,時差式信号機が設置されている交差点での走行は一層の注意が必要です。平成16年7月の最高裁判例では《自動車運転者が時差式信号機のある交差点を右折して進行するときに,時差式信号機との標示がなかった場合でも,自車の対面する信号機の表示を根拠として,対向する自動車の対面信号の表示を判断し,対向する自動車の運転者が対面信号に従って運転するだろうと判断することは許されない》(出典:東京法令出版・令和3年版三段対照式交通実務六法)としています。
 信号機のある交差点で発生した交通事故で,争点となる多くは〈信号対立〉です。いわゆる〈青・青主張〉と言われるもので,「時差式信号機」の場合は,前述のとおり〈自車側の青信号が〇〇秒長い=対向側の信号は〇〇秒前に赤となっている〉ということから,「定周期式信号機」にも増して,どちらかが赤信号で交差点に進入したことを証明することは容易ではありません。信号対立の場合の調査は,当事者双方の説明に加え,刑事記録(供述調査,実況見分調書)と信号サイクル表,およびドライブレコーダー・防犯カメラ・客観的な第三者による目撃者証言等の資料を可能な限り取り付け,信号色の特定について慎重に精査する必要があります。