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2022/08/19

【過失割合】中央分離帯間の開口部で停止中車両に直進車が衝突した事故

 

交通事故の過失割合を判断するために,関係各位におかれては通常,別冊判例タイムズ38,もしくは民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準〖赤い本〗を参考に検討されていることと思います。しかし,毎日発生している交通事故では前記資料等で対応(決定)できない事故形態が多いのも実情です。
今回は下記の事故形態について検討します。

検討事例〈不定形事故⑴〉

《事故現場は中央分離帯のある片側二車線道路の中央部。被害者A車が路外駐車場から反対側車線に右折進入しようと中央分離帯間の開口部まで進行し,左方から進行してくる他車両の通過を待機するため開口部で停止していたところ,右方から第二車線を走行してきたB車がA車の右側に衝突した事故。》

 

本件は,基本的には前記資料の事故形態「四輪車同士の路外出入」(前記判例タイムズ:P279【147図】,赤い本P304(4)1)に該当すると考えられますが,上記事故形態が,果たして通常の「路外出入」と言えるかどうかが判断の分かれ目になると考えられます。
前記資料には,上記事故形態の具体的な過失割合は示されていません。

したがって,このような事故形態では,裁判所は,事故発生場所・事故時間・見通し・天候・A車の停止位置・B車の衝突時の速度・基準過失修正等,様々な個別要因を吟味し過失割合を決定する事案が多いと思慮します。

 

実際の判例では,裁判所は基本過失割合A車80:B車20としつつ,A車の〈路外からの走行中の事故ではなく,左方車両の通過確認のためやむを得ず中央分離帯開口部で停止していた〉事情を鑑みながらも〈直進車の進行妨害〉の過失を認め,かつB車には〈回避可能であり,前方不注視〉の過失を認めA車60:B車40で結審したようです。

 

上記と類似した事故形態でも車種や速度等の相違で過失割合が80:20となった判例や,あるいは,本件とは逆に直線道路から中央分離帯の開口部を通り,路外へ進入の車両と対向直進車との事故等,裁判での過失割合はさまざまな判例が示されています。
日頃から我々が時折目にする自転車の走行で〈信号機のある交差点で自転車が赤信号側から交差点を斜め横断してきたその時,車両は青信号で交差点に進入してきた〉時に事故となった場合,前記「判例タイムズ」P391【235】【236】,あるいは〖赤い本〗の基本過失割合(自転車80:車20)にどの程度の過失修正を加減算すればいいのか非常に迷うような事案も多いと思います。

判例タイムズや〖赤い本〗に掲載されていないようないわば〈不定型事故〉の過失割合の検討には特に慎重な対応が求められます。