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2022/09/27

【過失割合】センターラインオーバーによる正面衝突事故

検討事例 センターラインオーバーによる正面衝突

自賠法第3条によると,

 

「自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと,被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは,この限りでない。」

 

とされ,一般に「ただし書き3条件」と呼ばれています。

 賠償責任の有無について,この3条件,特に「自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと」を具備しているか否かがポイントとなります。事故当時者がこれを証明できた場合に限り,自賠責ではいわゆる「無責」と言われ,賠償責任は発生しません。

 

 上記の自賠法第3条ただし書きが焦点となる主な事故形態の一つに「センターラインオーバー(中央線突破,中央部突破)」があります。判例タイムズ38のP284【150図】では,基本的にはセンターラインオーバーをした車両の過失が100で,通常走行車両の過失は0(=無責)となりますが,この過失0を証明するには前記ただし書き3条件を満たす必要があります。

 一般に,車両運転者は相互に交通法規を遵守し左側通行を行うという〈信頼の原則=相手はまさか常識外れの運転や動作はしないであろうと信頼できるような状況〉に基づいて運転していますが,相手車両が自車の目前で突然センターラインを越えてきたような場合,「予見可能性なし」「回避可能性なし」等が立証されて初めて自賠法第3条ただし書き3条件が満たされ「無責」となり得ます。

 一方で,「過失(注意義務違反)は,予見可能性を前提にした予見義務違反,および回避可能性を前提とした回避義務違反がある場合に認められる」とされていることから,判例タイムズ38の修正要素にも記載されているように,例えば,双方車両に相応の距離がある場合,A車が対向車線を走行してくるB車両のふらつき等の異変を察知していながら,回避遅れや前方不注視等で衝突した場合は,A車に一定の過失割合が修正され,A10:B90等となります。

 また,道路幅員が狭く,中央線も引かれていない道路での「中央部突破事故」,あるいは,山間部等のカーブの多い道路での「中央線(部)突破事故」についても,どちらの車両が中央線(部)を突破したのかを十分に検証しなければなりません。道路幅員が極端に狭く,中央部を越えて走行せざるを得ないような場合は,もちろん検証は必要ですが,双方車両に注意義務ありと結論づけられ50:50と判断されるケースもあります。さらには,一方の(あるいは双方の)車両が二輪車であった場合,どちらが中央線(部)を突破したのかとともに回避措置の妥当性(すれ違いが可能であったのか否か,等)の検証も必要となります。
 いずれにしても,一方の車両が「無責」となりうる事故形態については,一方の車両に自賠責上の〈著しい過失(修正率+-10)〉〈重過失(修正率+-20)〉適用の有無について,特に慎重な対応が求められます。