2022/10/03
【過失割合】一方道路にしか車両用信号がない交差点での衝突事故
検討事例 一方道路にしか車両用信号がない交差点での衝突事故
交差点には交差する双方道路に車両用信号機が設置されているか,いずれにも信号機が設置されていない場合が大半を占めますが,中には一方道路のみに車両用信号機が設置され,交差道路側には車両用信号機の設置がなく,一時停止規制と歩行者用信号機のみが設置されている交差点も少なくありません。
このような交差点は道路交通法上,「信号機により交通整理が行われていない交差点」と位置付けられており,車両用信号機が設置されている一方道路を走行する車両は対面信号に規制されますが,交差道路側から進入する車両は歩行者用信号機のみの設置のため車両に対する信号規制はなく,一時停止規制のみで直進・右左折が可能です。通常は交差道路側の歩行者が,歩行者用信号機の押ボタンを押した場合にのみ一方道路側の車両用信号機が赤色に変わり,交差道路側の歩行者用信号機が青色表示となるパターンです。
一方道路の車両用信号機が赤色となった時=交差道路側の歩行者用信号機が青色となった時,一方道路を走行の車両が赤信号で交差点に進入し,交差道路側から交差点に進入した車両との衝突事故については,判例タイムズ38 P224~226【106図】に記載され,基本過失割合は,歩行者信号「青」で交差点に進入した車両30:車両用信号機「赤」で交差点に進入した車両70とされています。
この基本過失割合の根拠は,民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準上巻〖赤い本〗〔38図〕欄に記載のように,《車両用信号機に規制されない交差道路から進入した車両に対して,青信号で交差点に進入するのと同等の保護を与えることは不相当である》との判断が示されていること,および,判例タイムズ38 P224に記載の《一方道路の信号が赤信号である場合には,交差道路から交差点に進入する車両は,一方道路を走行する車両が交差点に進入してくることはないと信頼して走行するのが通常であり,この信頼は,法的に保護されるべきものと考えるのが相当である》との東京高裁判決に基づいていると考えられます。
ただし,上記の基本過失割合は,双方車両が減速なく交差点に進入した場合の過失割合で,双方車両には,〈明らかな先入した場合〉等々の修正要素がそれぞれ定められています。
なお,前記〖赤い本〗〔38図〕は,一方道路側の交差点を通過後の位置に横断歩道が一ヶ所標示されており,判例タイムズ【106図】の一方道路側の交差点手前と通過後の位置に二ヶ所標示されている図とは異なっています。
〖赤い本〗〔38図〕の場合,基本過失割合も20:80とされ,修正要素の内容もそれぞれ異なっています。交通事故調査を行う場合は,基本的に事故発生交差点がどちらに該当するかを踏まえたうえで検討することになります。