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2022/10/05

【過失割合】右折車と追越し直進車との衝突事故

検討事例 右折車と追越し直進車との衝突事故

 右折車と追越しをする後方直進車との衝突事故は,判例タイムズ38 P264~P267【135図】【136図】で交差点における衝突事故を例に挙げ,その基本的な考え方,および過失割合が記載されていますが,当該交差点が〈追越しが禁止されている交差点〉あるいは〈追越しが禁止されていない交差点〉なのか,また,〈追越し車が中央線を越えて追越したのか〉あるいは〈追越し車が中央線を越えずに追越したのか〉等,事故発生場所・状況によってその事故態様は大きく四つに分類されます。実際の事故が発生した場合,前記の四分類のいずれに該当するかで過失割合が異なってきますので事故調査を行う場合の留意点となります。

 

 道路交通法第2条21項は〈追越し〉について

 

「車両が他の車両等に追い付いた場合において,その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し,かつ,当該車両等の前方に出ることをいう」

 

と規定されています。一方,〈追い抜き〉とは「車が進路を変えないで,進行中の前の前方に出ること」をいい,道路交通法上の規定はありません。この点,道路交通法第30条は,〈追越し〉が進路を変えての前車前方に出る行為のため事故発生リスクが大であることから,追越し禁止場所について細かく規定しています。(但し,当該道路が優先道路である場合,自動車・原動機付自転車等が自転車などの軽車両を追越す場合は除かれます。)

 

 追越し禁止の道路標識が設置されている道路は,たとえ道路の右側部分にはみ出さなくても追越し行為は全て禁止されます。前記道路標識が設置されていない道路は〈道路右側にはみ出さなければ追越し可能〉となります。道路右側にはみ出さないで追越しが可能となる道路は少ないと考えられますが,中央線の色や形で道路右側へはみ出して追越し可能,追越し不可の場合があります。通常は道路中央線が《黄色の実線》は《中央線の右側にはみ出して通行することは禁止。はみ出さなければ追越し可能》となっています。道路中央線が《白色の実線》は道路幅員が6m以上の道路に設けられていますが,追越し可能,追越し不可の基準は黄色中央線と同様です。また,道路幅員が6m未満の道路に設けられている道路中央線が《白色の破線》の場合は《右側にはみ出しての追越し可能》となっています。
 なお,判例タイムズ38 P268~271【137図】【138図】には類似の事故態様として右(左)折車と後続直進車との過失割合基準が掲載されています。いずれの事故態様も,実際の事故発生例として多い部類に入ると思われますが,事故態様が前記の【135図】【136図】【137図】【138図】のどの図に該当するのかを,当事者の説明,目撃者証言,刑事記録,物損資料等々の諸資料により見極めることが最も大切となってきます。