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2022/10/02

【過失割合】緊急自動車と一般自動車との衝突事故

検討事例 緊急自動車と一般自動車との衝突事故

 緊急自動車とは,パトカー・救急車・消防車等が緊急の用務のために運転するとき,サイレンを鳴らし,かつ,赤色の警光灯を点灯させ走行している状態の自動車(赤色の警光灯の点灯のみでは緊急自動車とはならない)を言い,緊急自動車の通行方法にかかる優先性や,特殊性が道路交通法第39条,同40条,同41条等で規定されています。つまり,赤信号での停止義務免除,通行禁止道路での走行可能,一時停止指示場所での停止不要,右側通行可能等々,緊急自動車以外の車両が遵守すべき項目について概ね適用対象外とされています。

 したがって,緊急自動車以外の車両は,交差点又はその付近において緊急自動車が接近してきた時は,交差点を避け,かつ,道路の左側(一方通行道路で左側に寄ると緊急自動車の通行を妨げることとなる場合は右側)に寄って一時停止しなければならず,それ以外の場所で緊急自動車が接近してきた時は,道路の左側に寄って進路を譲らなければならない,ことになります。

 もっとも,緊急自動車といえども,前記法令で全ての規制・注意義務が免除されている訳ではなく,交差道路が優先道路又は明らかに広い道路に進入する場合の徐行義務,交差点では他の車両に注意しできる限り安全な速度と方法で通行する義務,一時停止の義務が免除される場合でも他の交通に注意して徐行しなければならない義務,等は負っています。また,定められた最高速度を超えて走行していいのは,最高速度違反の車両などを取り締まる緊急自動車のみで,その他の緊急自動車は最高速度を守らなければならないと規定されています。

 判例タイムズ38 P302~308では,道路交通法に基づく概略が記載され,【158図】では信号機のある交差点での出合い頭衝突事故,【159図】では信号機のない交差点での出逢い頭衝突事故の2例が掲載されています。つまり,停止・一時停止義務を負う主体が通常の場合と逆転しており,それぞれ過失割合にかかる基準が示されています。ただし,この2例は判例タイムズにも記載されているように,緊急自動車の過失を考慮する余地があると考えられる事故態様のうち,典型的な例が掲載されているのみで,その他の事故態様については掲載されていません。

 その他の事故態様としては,例えば,緊急自動車がセンターラインオーバーし対向車と衝突した場合や,緊急自動車が転回した際に前方(あるいは後方)から走行してきた自動車と衝突した場合等,判例タイムズに記載されている他の殆どの事故態様が想定されます。このような他の事故態様においても,緊急自動車の優先性・特殊性を前提にしつつ,一般自動車のその時の対応(走行状況,回避・停止状況等)が考慮されたうえで過失割合が決定されるものと考えられます。