2022/10/06
【過失割合】駐車場内での衝突事故
検討事例 駐車場内での衝突事故
一口に〈駐車場〉と言っても,コンビニや薬局等の収容駐車台数の少ない小規模駐車場や,郊外商業施設の駐車場や立体駐車場等の数百台規模の収容が可能な大規模駐車場など,その形状や収容駐車台数も千差万別です。
駐車場における事故発生件数は思いのほか多く,前記商業施設の大型化や郊外立地が進み大規模駐車場も増加してきたことから,判例タイムズ38の全訂5版では,主に大規模駐車場内の通路で発生する代表的な事故例を掲げ解説・基準化しています。なお,大規模駐車場とコンビニ等の小規模駐車場との明確な区分基準はないようですが,平地駐車場・立体駐車場ともに概ね100台以上程度が大規模駐車場と考えていいのではと思慮します。
もっとも,従前から自賠責保険に請求される「駐車場内事故」については,コンビニ等の通路のない小規模駐車場での接触事故がその多くを占め,小規模駐車場での事故については,前記のような基準もなかったことから,自賠責保険では過失割合について事故状況を調査・検証したうえで個別判断にて対応してきたものと推察されます。なお,〈駐車場〉については,過去の判例(出典:ウィキペディア,昭和44年7月11日付最高裁判決)において《私有地であっても,不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所は,同法(道路交通法)上の道路であると解すべきである。》旨の判断等が示されており,「駐車場内事故」については駐車場内通路の有無にかかわらず,その駐車場が《不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所》である限り自賠責保険への請求は可能です。
しかしながら,自賠責保険に請求してもすべての事案が自賠責保険の支払い対象になるとは限りません。「駐車場内事故」については,過失割合の検討とともに,特に留意する必要があるのは車両対車両事故による受傷機転です。小規模駐車場・大規模駐車場にかかわらず,概ね駐車場内では車両の速度も遅く,車両同士が接触した場合,車内の乗員が受ける外的衝撃は弱いのが一般的であり,怪我の程度は通院日数も数日程度と軽症である場合が大半です。他方,車両の損傷程度もわずかな軽微接触事故であるにも関わらず,数十日~数ヶ月の長期治療・施術を行い自賠責保険に請求したものの,自賠責審査の[受傷機転=事故と受傷との相当因果関係の有無]のチェックを受ける事案も散見されます。特に,車両対車両の駐車場内事故については,その事故態様等から治療・施術状況が自賠責保険の対象となるのか否かの検証が必要です。