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2022/09/28

一方通行違反車との出合い頭衝突事故

検討事例 一方通行違反車との出合い頭衝突事故

《一方通行》規制標識は青い長方形に白い矢印が描かれている標識で,
「この標識より先はその矢印の方向にしか進行出来ない」ことを示すものであり,道路交通法第8条1項は〈通行の禁止等〉「歩行者又は車両等は,道路標識等によりその通行を禁止されている道路又はその部分を通行してはならない」
と規定されています。
《一方通行》の道路を反対方向に走行すると前記法令により「通行禁止違反」となります。《一方通行》規制標識を見落としたという方も多いかと思いますが,内閣府ホームページによれば,平成30年中の形態別道路交通法違反件数(警察庁資料による)中,「通行禁止違反」は約11.3%を占め,「信号無視違反」とほぼ同率となっています。
 車両運転者の交通ルールの厳守は当然ですが,前記法令に従わなかった場合,すなわちA車両が《一方通行》に違反し,道路を反対方向に走行して交差点に進入し出会い頭衝突事故となった場合,無違反で交差点に進入したB車両との基本過失割合は,判例タイムズ38 P217【102図】に記載のようにA車両80:B車両20(左方優先の考え方なし)となり,無違反のB車両にも相応の注意義務ありと判断されています。B車両の運転者は《まさか一方通行規制のある道路を反対方向に走行して交差点に進入してくる車両があるとは思わなかった》となると思いますが,判例タイムズ掲載の基本過失割合は,《一方通行》を無視あるいは気づかずに走行してくる違反車両がある可能性を否定できないことからか,無違反車両も相応の注意をして運転すべき,と安全確認義務を課しています。
 なお,判例タイムズ38 P215【101図】の一方通行標識のない交差点での双方過失割合は,前記の場合,60:40(左方優先の考え方あり)となり,【102図】と【101図】とを比較してみると,《一方通行》違反車には過失割合相殺率20の〈重過失〉が課されている状況が分かります。
 一方,道路交通法第7条1項では〈信号機の信号等に従う義務〉「道路を通行する歩行者又は車両等は,信号機の表示する信号(中略)に従わなければならない」と規定され,判例タイムズ38 P208【98図】では,赤信号無視で交差点に進入した車両の基本的過失を100とし,青信号で交差点に進入した車両の基本的過失は0(=無責)としています。上述のとおり,「信号無視違反」の割合も「通行禁止違反」の割合と同比率となっていますが,《まさか赤信号で交差点に進入してくる車両がいるとは思わなかった》事故であっても,信号順守義務という絶対的大原則の観点から,青信号で交差点に進入した車両には前記の《一方通行違反》の事故態様とは異なり,当初から20%の過失割合を課していない点が大きく異なります。