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2023/12/19

交通事故証明書の甲欄、乙欄等について

弊社では、事故調査(有無責、重過失減額等々)を行うに当たって提出いただく基本資料の第一に「交通事故証明書」をお願いしています。なかには諸般の理由・事情で交通事故証明書の取付けができない事故もありますが、一般に、交通事故証明書は事故発生の事実〔いつ、どこで、誰と誰が、どのような事故だったのか〕を証明する資料として重要となります。

交通事故証明書とは

事故発生の連絡を受けた警察官が事故現場に臨場し、当事者双方から聞き取り確認した調査内容に基づいて作成された資料で、各都道府県の自動車安全運転センターが証明書(人身事故、物件事故)を発行します。

被害者なのに甲欄に記載?

一般的に過失割合が高い当事者が〈甲欄〉に、過失割合が低い当事者が〈乙欄〉に記載される場合が多いと言われています。しかしながら、交通事故証明書下段には『上記の事項を確認したことを証明します。なお、この証明は損害の種別とその程度、事故の原因、過失の有無とその程度を明らかにするものではありません。』との但し書きが記載されていますので、必ずしも過失割合が高い当事者が〈甲欄〉、過失割合が低い当事者が〈乙欄〉ということにはなりません。交通事故に当事者が存在する限り、甲欄・乙欄・丙欄等のいずれかの欄に記載されることとなります。

弊社調査事例

弊社としては事故調査を実施する際には、事故類型や事故態様の実態を十分吟味した上で過失相殺率の提案をさせて頂いております。
 例えば、交通事故証明書の事故類型欄が〈車両相互・追突〉とされ、〈甲欄〉にA氏、〈乙欄〉にB氏が記載されている交通事故で、調査の結果、A氏運転車両が単に後方からB氏運転車両に追突した事故であれば、双方の過失割合はA氏100:B氏0となる可能性が大となります。
 一方、同様の事故類型でも次のような場合は、過失割合も大きく相違してきます。例えば、C氏運転車両がD氏運転車両の前方に車間距離を空けることなく、あるいは右左折合図を出すことなく突然進路変更したため、結果D氏のブレーキが間に合わず、D氏運転車両がC氏運転車両に追突した場合、〈甲欄〉にD氏、〈乙欄〉にC氏が記載され、事故類型が〈車両相互・追突〉となる場合があります。しかしながら、調査の結果、C氏運転車両が急に進路変更したことが事故を直接惹起したと確認できれば、〈乙欄〉のC氏の過失割合が高くなるケースもあります。このケースの場合は別冊判例タイムズのP291【153図】に示されている基本過失C氏70:D氏30に修正要素を加味して過失割合を導くことになります。

まとめ

交通事故証明書は事故調査の出発点となる重要な資料ですが、上記のように同じ追突事故でも事故態様はさまざまです。〈甲欄〉〈乙欄〉等の記載欄にとらわれることなく、双方の説明資料、実況見分調書等々の客観的資料に基づく調査が肝要と思料します。