2024/11/06
保険金請求形態による優劣(優先順位)
INDEX
交通事故で被害者が負傷した場合、概ね次の形式で自賠責保険に請求が行われます。
加害者が任意保険に加入していない場合
➀法15条請求(いわゆる加害者請求)
法15条請求とは、自動車損害賠償保障法(自賠法)第15条に規定された請求をいいます。第15条は「被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することが出来る」と定めています。被保険者とは、加害運転者・保有者のことを言い、被保険者が被害者の治療費・休業損害額・慰謝料等の支払いを行った場合、その支払った金額を自賠責保険に請求することが出来ます。
加害者が被害者へ賠償金を支払った後に当該15条請求を行うことで、限度額の範囲内で保険金を受け取ることができます。
➁法16条請求(いわゆる被害者請求)
法16条請求とは、自賠法第16条に規定された請求をいいます。第16条は1項で「第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる」と定めており、被害者自身が被保険者加入の自賠責保険に治療費・休業損害額・慰謝料等の請求ができます。
加害者側が任意保険未加入や、補償対応を拒否している場合には、被害者自身が自賠責保険に対して保険金を請求することができます。
※広義には健康保険組合等からの請求も法16条請求に含まれます。
加害者、被害者が任意保険(対人・人傷)に加入し、任意保険を経由して申請する場合
➀加害者側保険会社支払(いわゆる〔対人一括払い〕)
被保険者側の任意保険会社が被保険者に替わり被害者の治療費・休業損害額・慰謝料等の立て替え払いを行うことで、被保険者加入の自賠責保険に請求する方法です。通常は、被保険者の過失が被害者より大きい場合に多く利用されます。
➁被害者側保険会社支払(いわゆる〔人身傷害払い〕)
被害者側の任意保険会社が被害者に替わり(このため『代位請求』と位置付けられています)、被害者の治療費・休業損害額・慰謝料等の立て替え払いを行うことで、被保険者加入の自賠責保険に請求する方法です。一般的には、被害者側の過失が大きい場合に、対人一括払に代わり、人身傷害払が多く利用されます。
請求の優劣(優先順位)
上記、いずれのケースでも、自賠責保険が《賠償保険》であるため、優先順位が決められており、常に加害者側からの請求が優先します。具体的には、法15条加害者請求>法16条被害者請求>であり、任意社支払では、対人一括払い>人身傷害払いとなります。
交通事故で負傷された被害者の方は、治療代等を『いつ・誰に・どのようにして』保険金請求を行えばいいのか迷われることも多いかと思いますが、上記のとおり請求方法によって、それぞれ対応方法が異なりますので、まずは自身加入の保険会社や、交通事故業務に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。