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2022/10/04

【過失割合】信号残り車両との衝突事故

検討事例 信号残り車両との衝突事故

 道路交通法第50条1項は,《交差点への進入禁止》として

 

「交通整理の行われている交差点に入ろうとする車両等は,その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により,交差点に入った場合においては当該交差点内で停止することとなり,よって交差道路における車両等の通行の妨害となるおそれがあるときは,当該交差点に入ってはならない。」

 

と定めています。

 前記法令を遵守しなかった場合に発生する可能性がある事故態様が,民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準上巻〖赤い本〗〔32図〕に『信号残り事故』として掲載されています。一方,判例タイムズ38では,P207で《いわゆる全赤信号が一般的となり,大型交差点においても青信号で進入した車両が交差点を通過するまでに交差道路の対面信号機が青信号となることは通常生じ得ないこととなっているので,赤信号車といわゆる青信号残り車との事故については,基準を設けていない》と記載されています。

 

 しかしながら,実際に交差点を走行時の小職の経験から言えば,交差道路側の対面信号は「青→黄→赤」と変化しても,交差点内には進行出来なかった車両が存在し,自車側の対面信号が「青」に変わったものの,交差点内の車両が脱出すべく前後左右に回避行動をしていた光景を見たことがあります。この時の交差点は,交通量が多い割には次の交差点までの距離が短く,かつ,次の交差点の交差道路は幹線道路であるため双方の交差点の信号サイクル時間(秒数)が異なっていたからと考えられ,自車の前方で交差点内に残った車両は,当該交差点前方の次の交差点の信号もほぼ同時に青信号に変わると軽信したのが原因かと思われます。

 このように信号残り車両が存在する場合,通常は,前方には進行出来ない状態ですので,本事故態様のように,前方不注視等で信号残り車両と衝突する可能性は極めて低いと思慮しますが,仮に『信号残り事故』が発生した場合は,〖赤い本〗〈32図〉を参照に双方車両の過失割合を検討することになります。

 

〖赤い本〗〈32図〉では基本過失割合を,一方道路側の交差点から青信号で発進した車両30:交差道路側での信号残り車両70としています。この過失割合は,〈青信号で発進した車両にとって,前方車や右方車等のため交差点を一瞥しただけでは信号残り車を発見しにくい態様を想定している〉とされていることから,青信号車両が信号残り車両を発見容易な場合,あるいは信号残り車両が交差点内で立往生している状況時に対面信号「青」のみを見て安易に進行した場合等は,過失割合が逆転することがあります。

 事故発生の可能性は極めて低いとは言え,発生した場合は,上記のとおり過失割合が逆転する可能性がある事故態様であることを念頭において対応する必要があります。