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2022/06/10

医療過誤事案について

「医療過誤は他の事案とは別次元」

 

弊社の意見書業務の中で、医療過誤に関するご相談がここ最近増えてきているのを実感してきました。

以前までは業務全体の2〜3%ほどのご相談でしたが、ここ最近は倍近くまで増加しています。

医療過誤の特殊性

医療過誤事案の特殊性は何と言っても、医療のプロを相手取らなければならないことです。法律事務所の中には医療過誤事案についてはお断りしているところもあるほどで、法律事務所としても敬遠したい業務の代表格かもしれません。

弁護士は当然に法律のプロですが、医療過誤では医療の専門用語が飛び交うため、医療にある程度理解がなければ何を主張し合っているのか皆目見当がつかない状況となります。

また、医療過誤事案の多くで、医師や病院側の「過失」を特定しなければなりませんが、この「過失」が「一連の医療行為のどの部分にあったのか」を特定することは相当に難儀です。そもそも裁判所は基本的には性善説に立って、医師が患者を治療する以上、適切な判断のもと適切な治療が選択されて実施されたと考えられることが多いようです。

したがって、治療の結果が患者側が求めるものではなかった場合でも、一連の治療行為に医師の「過失」が認められなければ、結果に対する責任を追及することは困難な場合が多いのが実情です。

ましてや、訴えられる方の医療機関側は、主治医等を含め豊富な医療的知識をもとした論理展開が可能ですが、患者側にはこの土台はないため、多くの事案で苦戦を強いられます。

 

他の種類事案では・・・

日本の法律では、一般的には金銭等を請求する方が「請求の根拠」となる事柄について証明しなければならないとされています。

しかし、交通事故の場合には上記法律の特別法として「自動車損害賠償補償法」があるため、この法律に基づけば、損害賠償を請求された側(被告側)が「当該事故の発生に関して過失が無かったこと」を証明できなければ、賠償責任を負うとされています(挙証責任の転換)。ただし、損害(例えばケガや後遺障害について)は請求者する側に立証責任がありますので注意が必要です。

このような挙証責任の転換は、様々な法律で適用されており、身近なところでは、製造物責任法(PL法)も同様に製造メーカーに対して無過失責任を負わせる主旨となっています。

一般的には過失が無かったことを証明することは非常に難しいと言われており、免責されるケースは少ないようです。

 

一方で、医療過誤は前述の事案とは異なり、原則どおり、訴えを起こす患者側が医療機関側の「過失」を特定しなければなりません。前述したように患者側と医療機関側の知識差を考慮すれば、他の法令のように患者側に下駄を履かせることにも一定の理由はあるようにも思えます。しかしながら、医療過誤事案において病院側に無過失責任が課されてしまうと、医療の萎縮が起こることは想像に難くありません。そうなると本来であれば理想的となれる医療行為であっても、極力リスクが伴わない安全な治療を選択するようになり、質の低下や治療機会の喪失、ひいては医療技術の発展を妨げてしまう危険があります。

 

医療過誤事案に関する弊社の方針

以上のような事情から、医療過誤に関するご相談については、非常にシビアに捉えなければならないと考えています。ご相談の中には患者側の言い分はもっともだけれども、これが過失と認定されると医療側としては相当な負担になるだろうな・・・、と感じる事案も少なくありません。このような事案の多くは、協力して頂ける医師が見つかりません。

もともと過誤事案に協力をいただける医師の絶対数が少ないという個別的事情はございますが、医療行為に対する結果が重篤であったとしても、医療機関側の過失の特定が困難な事案については、担当頂ける医師をご案内することが出来ない場合がございますので予めご了承頂けましたら幸いです。

なお、医学意見書の作成可否にあたってはまずは一次調査(38,000円〜)にてお受けさせて頂くことになります。

 

なお、医療過誤に関するご相談に関わらず、弊社業務につきましては弁護士専用のサービスとなりますので、一般の方からのご依頼は直接お受けすることはできませんので、予めご了承ください。