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2022/07/19

自賠責における死亡事案 ~逸失利益算定のための年金受給の有無確認と疎明資料

「年金受給者の被害者請求(死亡損害)の際は確認を」 

交通事故で死亡した被害者が60才以上であれば,自賠責保険請求時には必ず年金(企業年金等を含む)受給の有無を確認しておくことが必要です。
被害者が年金を受給していた場合は,死亡損害額の逸失利益に加算することができる場合が多いからです。なお,ここでいう年金とは,国からの年金(老齢厚生年金等),企業年金等を含め,「受給者本人による拠出制のある年金等を受給していた者」を言い,無拠出性の福祉年金や遺族年金は逸失利益の対象とならないため注意が必要です。

自賠責保険で逸失利益の対象となる年金と判断された場合,死亡時の逸失利益を算定することになりますが,算定の基本資料は,〈管轄年金事務所発行の「年金額歴史回答票」〉,もしくは〈死亡日直前の4月1日付の「年金額改定通知書」〉の二つです。
なお,年金の「源泉徴収票」は1月1日~12月31日までの支給総額であり,自賠責保険基準の死亡直前の4月1日時点における向後の支給総額と一致しないため,逸失利益の算定資料として採用されていません。

 

逸失利益を確定する上で,最も確実な資料は前記「年金額歴史回答票」ですが,年金事務所に赴いての手続きが必要なことから,多くはご遺族の家庭に保有されている「年金額改定通知書」が疎明資料として提出されています。

 

しかし,「年金額改定通知書」は以下のとおりの留意点があります。

年金支給額自体の改定(増減)は基本的に毎年4月1日です。ただし,国の施策により死亡直前の令和〇年4月1日時点で年金支給額自体の改定がなされない年もありますので,受任者(16条請求の多くは弁護士)により〈(死亡直前の)令和〇年4月1日は年金支給額の改定は実施されていないことを厚生労働省(地方厚生局,管轄年金事務所等)に確認した〉旨を記載した念書等を付して請求する必要があります。この場合は,死亡直前の令和〇年4月1日ではなく,その前年の令和△年4月1日の年金額改定通知書を資料とすることになります。

また,「年金額改定通知書」は被害者宅に送付されてきますので,中には紛失や破損等で管轄年金事務所に再発行を依頼しなければならない事態も発生しますので,かえって手続きが煩雑になる場合もあります。