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2024/10/18

自賠責保険における「他人性」

自賠責保険における他人性

一般世間的には、親・配偶者・子供・親類縁者以外の人たちを〈他人〉と呼びますが、自賠法における〈他人〉とは、運転者や運行供用者(車両の保有者、運転補助者等)以外の者を指し、親・配偶者・子供・親類縁者であっても運転者や運行供用者以外であれば〈他人〉となり得ます。

一方で、自賠法第3条では、『自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。(※ただし書きは省略)』と定められています。

交通事故の調査において、車の同乗者等に対する自賠責保険対象の可否を判断する項目の一つに「他人性」があります。言葉としては《A氏はB氏に対して〈他人性が認められる〉、もしくは〈他人性が認められない〉》というものですが、まさに前記自賠法に示す《他人》であることが重要となります。したがって、「他人性」が認められれば自賠責保険の支払対象となり、認められなければ支払対象外となります。

他人性が問題となる例

「他人性」の検討が必要となる事故の多くは、例えば、2台の車両が出合い頭衝突事故を起こし、どちらの運転者も有責(過失割合5050等)の場合、一方の車の同乗者が同乗車(以下、当該車といいます。)の自賠責保険に請求してきた場合等です。この場合、当該車の所有者(保有者)・運転者・同乗者の運行支配程度の強弱で「他人性」の有無を判断することとなります。運行支配の程度は,車検証(登録事項等証明書保存記録等)上の所有者・使用者,運転免許の有無,通常発生するガソリン代等日常経費の費用負担者,自賠責・任意保険の契約者等を勘案して対応することとなります。

なお,車検証上の所有者が車販売会社,リース会社等となっている場合は,所有権留保の場合がほとんどですので,実質的所有者は車検証上の使用者となります。

したがって、上記事故が、夫が運転・妻が同乗していた場合でも、妻本人が当該車の車検証上の所有者で、妻が日常的に買い物等に使用し、夫は週に1回程度しか運転しない等の事情が確認できれば、妻の運行支配の程度は夫に比し大きく、自賠責保険上の「他人」とは認められないこととなり、当該車の自賠責保険の支払対象外となり、相手車の自賠責保険にしか請求できないということになります。

一般車両同士の事故のみならず、レンタカー借用時の事故、代行運転車両同乗時の事故、工場内・建設現場作業車誘導中の事故等も、「他人性」の有無を検討する必要のある事故となります。なお、自賠責保険で「他人性」の検討不要とされている事案は、一般的には同乗者が運転免許取得可能年齢未満(車両は18歳未満、二輪は16歳未満)の場合や、乗合バスやタクシー(個人タクシーは事案ごとに個別検討)の同乗者とされています。

自賠責保険において他人性が否定された場合

弊社では、自賠責保険において他人性が否定されたために、自賠責保険から支払対象外とされた事案に関する調査・ご相談については、一次調査(自賠責一般調査)として対応しております。

自賠責調査事務所にて、長年にわたって傷害・死亡にかかる調査・審査を担当した経験豊富な専門調査員が担当いたします。